「え、てか彼女おるん?」という質問の落とし穴
「え、てか彼女おるん?」
何年も会っていなかった男友だちと久しぶりに連絡を取ることがあり、じゃあ飲みにでも行こうかと言って飲みに行ったものの、1時間程度お互いの近況や仕事の話、共通の友人の話題など一通り話し終わった後、訪れる沈黙…。
それを避けるために放たれる、最終手段ランキング上位に食い込む質問ワードである。(西井調べ)
私たちは何気なくこの質問を使うが、この質問は
「男には女の恋人が、女には男の恋人がいる」
ことが前提になっている。
まさに上記と全く同じシチュエーションが、高校の友人と何年かぶりに会って飲んでいるときにおこったのだが、この質問をした私は、その後彼の話を聞いて後悔した。
彼はゲイだったのである。
彼はその時初めてカミングアウトをしてくれ、「男は女と付き合っている」という固定観念に縛られた私の質問を意に介していない様子だったが、それでも私は彼をないがしろにしているように感じた。
普段何気なく話したことが相手を傷つけることがある。
実際近所のおばさんに「そろそろ子どもがほしくなる年よね~」と言われて嫌な思いをしたレズビアンの人もいた。
セクシャルマイノリティだけではない。
私たちは自分の世界を当たり前とすることで、障がい者、貧困家庭、外国人、あらゆるマイノリティを攻撃してしまう可能性がある。
それ以来、私は相手がゲイかもしれない可能性を考え、 “彼女”ではなく“恋人”と言い換えるようにしているが、しかしそれで自分の言葉がナイフになることをすべて防げる訳ではない。
本当にすべての人の性的志向を内包した質問をするのであれば、人形に性愛を抱く人がいることを考慮して
「え、てか性愛対象おるん?」
にしないといけないし、そもそも他者に対して恒常的に恋愛感情や性的欲求を抱かないAセクシャルの人がいることを考慮すれば
「え、てか何かに性愛感じるほう?」
と聞かなければならないだろう。
また、例えば
「へーーーーい!お前まだあの娘と付き合ってんのーー???」
と友人をいじったら、実はその友人が昨日あの娘にフラれたばかりで…なんてこともある。
それで友人を傷つけてしまったからと言って、フラれたことを知らなかった私にそれを防ぐ手段はない。
相手のすべてを理解できない私たちは、何気ない言葉によって相手を傷つけてしまうリスクを常にはらんでいる。
もちろん相手を理解しようと努めることは大切だ。
しかし、それでも傷つけてしまった時は、その後「それを言われると傷つくんだ」と相手から言ってもらえるような、フラットな関係性を作っておくこと。
そしてそう言われたらそれを尊重し、二度と同じ内容で相手を傷つけないよう努力することが大切だと私は思う。