居場所づくりにはテーマがいる
ガス機器メーカーで働いていた友人から面白い話を聞いたことがある。
小さな町なので、どの家に誰が住んでいるかは地域住民ならだいたい知っている。
その家に住むおじさんはどうやら偏屈で、めったに外出せず、町の寄り合いにもなかなか出てこない、という話を彼は事前にほかの住民の方に聞いていたという。
そのおじさん宅にガス機器交換で行かなければならず、恐る恐る彼は呼び鈴を鳴らして交換にきたことを伝えた。
おじさんもガス機器交換とあれば出ないわけにはいかない。戸を開け彼に応じてくれた。
交換を終え、おじさんに説明していると、だんだんと話題がそれ、他愛ない会話が始まったという。
気付けば、小一時間もおしゃべりをしていた。
自分から外に出ていかない、人に話しかけないおじさんがとなぜそんなに会話が続いたか?
そこに「ガス機器交換」という媒介があったからだと私は思う。
対人援助に関心を持っていると「困っている人の話を聞きたい」「居場所をつくりたい」という声をよく聞く。
しかし援助される方からすれば、突然「あなたの話を聞いてケアしますよ!」「居場所を作ったので来てください!」と言われたところで素直に応じることはない。
そこに何かきっかけとなるモノがなければなかなか人と交流はしない。
美容院に「散髪」が、塾に「学習」が、カフェに「お茶」があることで、結果として「会話」が誘発されていることに、居場所づくりのポイントがあるのではないだろうか。
テーマが決まればあとはそれに興味を持つ人たちに声をかけていけばいい。
2人以上集まれば、それはもう立派な“コミュニティ”だ。