フツウをかきまぜる日々

“ひと”にまつわる事柄を、自分の経験とマンガや映画などを絡めて描きます。

HUNTER×HUNTER ネテロ会長に見る「リーダー論」

アイザック=ネテロ。
冨樫義博の傑作HUNTER×HUNTER』に登場する、数多くのハンターたちを束ねるハンター協会の会長である。 
 

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人知を超えた力を持つプロハンターたちから絶大な信頼と敬意を向けられる彼のそのカリスマ性が最も顕著に表れたのはいつだろうか。
 
 

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圧倒的な強さを見せつけた時か。
 
 

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それとも主人公に厳しくも温かいメッセージを投げかけた時か。
 
 

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はたまたハンターたちが戦闘に用いる「念能力」ではなく、自身に埋め込まれた「爆弾」を用いて命と引き換えに難敵を倒すという、ミッションのためには手段を選ばないプロ意識が表れた時か。

 

ここでは敢えて、ネテロ会長の人事配置に対する意識を取り上げたいと思う。
 
 
ハンター協会の副会長は会長の指名で決まる。
 
組織は大きくなればなるほど、例えリーダーであっても自分の意見を通すためには時間と手間がかかる。
逐一所属メンバーの承認をとらなければならないし、反対意見だって出る。
そんな中、もし副会長がイエスマンであれば、リーダーは自分の意見をより通しやすくなり、思うように運営ができるようになるはずだ。
 
しかしネテロ会長は、優秀かつネテロ会長に心酔するハンターではなく、あえて自分の意向に沿わないパリストン=ヒルを選出する。
 

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底の見えない狡猾さと周囲を振り回す策略ぶりから、抑止が効かない「怪者(けもの)」と評されるパリストンを、なぜ会長は副会長に指名したのか。

 

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今「男性の男性による男性を考えるための勉強会」を主宰する市民団体、Re-Design For Men(https://www.facebook.com/RDFM0625/)の代表を務めているのだが、全国でも数少ない男性のための活動ということと、大切な縁もあって、せんだい男女共同参画財団主催のジェンダー論講座に、ゲストとして話題提供をする機会があった。
 
活動を始めたきっかけや、活動内容、それを通して見えてきた男の課題など、30分ほどお話しさせていただいた。
 
それが思いのほかウケがよかった。
十数人の受講者の方々は、笑い話には笑顔で応じ、深刻な話には深く頷いてくださった。
話し終えた時には拍手までいただいた。
 

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自分の話を、自分の始めた活動を複数の人に評価されるのはなかなか気分の良いものだ。
調子乗りな関西人の気質も相まって、話しているうちに
「俺って実はすごいんじゃね? 世の中変えちゃうんじゃね?」
という尊大な自意識が私の中にむくむくと湧いてきた。
 
先駆的な活動家として名を馳せ、いつかは「プロフェッショナルとは…」と語る番組に…☆
 
が、、よくよく考えれば、私が話した内容は単純なことである。
活動もまだ始めて半年しか経っていない。
 
自分の中に名声欲がジワリと潜んでいることに気づいた。
 
名声欲は行動の原動力にはなるが、それが先行してしまうと本来の目的をはずれ、自己本位になってしまう。
元々素晴らしいビジョンを持っていたのに、その欲に呑まれたために周りの人たちを置き去りにしたリーダーも何人か見てきた。
 
私も「男性とその周りの人たちが生きやすくなる」というビジョンを見失い、既存の参加者が満足していないのに活動規模を広げたり、参加者の意向を無視してメディア露出をしたりするかもしれない。その可能性がある。
 
そんな時、リーダーの暴走を止めるブレーキ役が組織の中には要る。
「ちょっとちょっと、ぼくら置き去りにされてまっせ」と言ってくれる存在だ。
 
その役目はリーダーの意見に常に従うイエスマンでは務まらない。
リーダーと対等な関係で、かつ思っていることを素直に言ってくれる存在でなければならない。
 
さらにリーダーとメンバーの意見が違えば、それだけ組織としての戦略は多様になる。
リーダー+イエスマンだけの組織が持つ戦略は1つだけだ。
 
だからこそ、ネテロ会長は“最も苦手なタイプ”であるパリストンを副会長に指名した。
 
リーダーの一声で動く機動力のある組織か、リーダーの暴走を止め、かつ多様な戦略をもつ組織か。
私はできれば常にパリストンのいる後者の組織作りを心がけたい。
 
「心」Tシャツ買おうかな。