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フツウをかきまぜる日々

“ひと”にまつわる事柄を、自分の経験とマンガや映画などを絡めて描きます。

feedback or egoism -あなたはロケットか、それとも芸術家か-

“フィードバックとはロケットのようなものである”
と何かで読んだことがある。
 
ロケットには、地面に対して垂直にまっすぐ飛ぶよう調節するためのフィードバックシステムがついており、少しでも曲がりそうなら軌道修正するらしい。
 
人間も周囲からのフィードバックを得ることで真っ直ぐ成長できる、というわけだ。
 

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例えば高校で初めてテニスを始めた私は、自分のフォームを先輩たちに見てもらい、アドバイスをもらうことでより良いものに修正していた。

 

熟達者や年長者からだけではない。

部下や年下からもらうフィードバックも重要だ。
例えば会社での自分のマネジメントや指導に関して、指導を受けている当の本人である部下からフィードバックをもらい、次に活かすことができれば、それにまさる上達はないだろう。
 
成長や熟達、そして人間関係を円滑に進めるためのツールとして、フィードバックは大きな役割を果たす。
 
 
ではフィードバックを受け取らなければ、人間はよいパフォーマンスができないのだろうか?
 
神戸に住んでいたころ、タナカさんという美容師さんに髪を切ってもらっていた。
基本的に美容院では黙っているほうが多いのだが、なぜかタナカさんとは馬が合い、真面目な話から下世話な話まで(今思えばあんなオシャレスペースでよくあんな話してたな)、色んな話題で盛り上がれるほど仲良くなった。
 
何度目かに訪れた時、
「いつもの感じで〜」とお願いするとタナカさんは真剣な顔で
 
「いや、西井くん。今日はちょっと挑戦してみよう」
と言い出した。
 
新たな髪型にしてみようと言うのだ。
「昨日合コンで会った娘がすごい可愛くてさ〜」
といつもアホな話をしているタナカさんとは打って変わって真剣な表情である。
 
ビダルサスーンアカデミーでの留学経験のあるタナカさんが提案したのはもちろんサスーンカット。
ショートボブの裾をザックリと、厚みを残してラインを出す。
 

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こんな髪型が眉が濃くて唇が厚い典型的平安時代顔の私に似合うのか⁇
とハラハラしながらも、怖いもの見たさとタナカさんの真顔に押し切られ、私は彼の提案を受け入れた。
 
サスーンカットを始めたタナカさんは正に水を得た魚。
 
「西井く〜ん、いいねえ〜〜
い〜いライン出てるよ〜〜」
 
と嬉々として切りすすめていく。
その行程を鏡越しに黙って見守るしかない私は、さながら画家に彩色されるキャンバスのようであった。
 
これは果たしてアリなのか…と戸惑う私を尻目に、タナカさんは出来上がった髪型(作品)に大満足。
「いいラインだね~」と言いながら写真を撮り、Facebookにアップまでした。
 
そんな彼のテンションの高まりを見ていると、最初は似合わないと思ったサスーンカットもなんだか良く思えてきた。
そして何より自分が良いと思うものに突き進む、美容師でありながら芸術家のようなタナカさんの姿勢を羨ましいと思った。
 
エゴイスティックな進め方は一見自分勝手のようだが、時に相手を刺激し、新たな世界を発見させる。
そして相手を巻き込んで素晴らしい結果を残すことがある。
 
効率性を考えるなら真っ直ぐ飛ぶほうがいい。
でも多分、横に飛ぶロケットがあってもおもしろい。