フツウをかきまぜる日々

“ひと”にまつわる事柄を、自分の経験とマンガや映画などを絡めて描きます。

「女性に否定的なかかわりをされること」の解像度を上げる ―「負の性欲」言説への批判的応答―

0.はじめに 現在「負の性欲」という言葉がTwitterで拡散されている。元になったTweetを見たところ「遺伝的に劣った男性に対して女性が抱く嫌悪感や拒否感」を意味するらしいが、科学的な裏付けは特にない。 確かに「女性から否定的なかかわりをされる」と…

ナラティヴコミュニティの意義・分類・進め方

ナラティヴコミュニティとは? 語りによって構成され維持される共同体。「回復」「研究」「解放」などの大きな物語が軸にあり、またその中で新たな語りが創出される。 ナラティヴコミュニティの意義 ■他者に関心を持つこと/持たれること 物語に対する敬意か…

女の多声性を記述するということ ー樫田那美紀『シスターフッドって呼べない』を読んでー

先日、大阪で開かれた文学フリーマーケットに足を運んだ。小さな長机が所せましと並び、売り手たちは机の向こう側からこちらの視線をとらえては「どうですか!」と声をかけてくる。おそらく相当な労力をかけたであろう作品群と、その書き手が一堂に会して並…

「モテる」の再考〜「イケメンだから許される」は本当に「イケメン」だから「許されて」いるのか?~

主催している男性の語り合いグループ「ぼくらの非モテ研究会」(以下、非モテ研)で来週行われるイベントに向けた思いのようなものを書いておこうと思う。https://kokucheese.com/event/index/566119/ これまで非モテ研は「モテ」を目指すものではないと謳っ…

三重ダルク、探訪。「生きること」を支援すること。

男性同士の語り合いグループ「ぼくらの非モテ研究会」を開いて1年が経つ。 先日ありがたいことに、グループでの活動について『現代思想』2月号に寄稿させていただいた。 青土社 ||現代思想:現代思想2019年2月号 特集=「男性学」の現在 その中で私は、仲間…

「自己肯定感」という言葉がいまいちよくわからないので再考してみた。

「自己肯定感」。 昔からある言葉だがここ最近特に耳にすることが多くなった。 何か問題がありそうだったらとりあえず「自己肯定感が低いんだよね~」と言って済ませてしまえるような、悪用の気配さえある。 こうした「自己肯定感」の氾濫の中で、改めて考え…

インポテンツ、棺桶、チキンラーメン ~焦点化されなかった東日本大震災〜

「おにーちゃんにだけ言うけどね、俺ね、今70(歳)でしょ。で、震災から6年か。6年間、64(歳)からもう1回もたってないんだよ。」 ——え、たつ…? 「下半身のあれね、勃たなくなってね、はっはっは(笑)」 ——震災の影響で、ってことですか? 「それはわか…

べてるの家、探訪

3月末に北海道浦河町にある「べてるの家」にお邪魔した。 1日だけだったが実りが多く、そこでの学びをまとめておきたいと思う。 べてるの家とは べてるの家とは、統合失調症や、うつ病などの精神障害を抱えた当事者の活動拠点のことで、名産である日高昆布の…

語りだす男 ― 男性グループという視座 ―

「洗濯物を干す男」では私の怒りと加害性を、「殴られる男」では私の被害体験と痛み、そして語れなさについて書いてきた。 kainishii.hatenablog.com kainishii.hatenablog.com こうした経験から、どうやら私の中には2つの規範があることが見えてきた。 1つ…

殴られる男 ― 痛みと語れなさ ―

私の経験などを「男として生きてきた」ことを切り口に書いていく、「〇〇する男」の2つ目の記事になる。 前回「洗濯物を干す男」では私の怒りと加害性について扱った。 洗濯物を干す男 ― わたしの怒りの研究 ― - フツウをかきまぜる日々 今回は私の被害経験…

洗濯物を干す男 ― わたしの怒りの研究 ―

以前地下鉄千代田線の女性専用車両に、複数の男性が乗り込み、その影響で電車が遅延したというニュースがあった。 彼らはあえて女性専用車両に乗り込み、そして依然として乗り続けているらしい。 そのニュースを知って以来、彼らがそうした行動を続ける背景…

差別を考える、物語を上書きする

先日兵庫県尼崎市で行われた被差別部落の学習会に参加した。 「部落差別とインターネット」というテーマで行われ、同和教育が学習指導要領からどんどん減っているのに、インターネットでは部落地域や部落出身者を貶める表現が氾濫している問題が取り上げられ…

恋人にゾンビと言われた男の話

あなたは恋人にゾンビと言われたことがあるだろうか。 私は、ある。 10年前、高校2年生だった私は初めてできた恋人とのバラ色ライフにどうしようもなく浮き足立っていた。 クールキャラ(女の子につれない態度をとる、例えば「おはよう!」という女の子の挨…

ノンケがゲイバーに行ってみた。

「右から2番目のあのメガネくんがタイプ!」 友人に連れられて初めて訪れたゲイバーで、お客の一人に言われたセリフである。 仙台から大阪へ引っ越す準備が終わったころ、ゲイの友人が「最後の思い出に」と、私を含めノンケ(異性愛者)3人を連れて行ってく…

それぞれの3月11日

今日で6年と1ヶ月。 先月初めて東日本大震災の追悼イベントに参加した。 私が参加したのは石巻市の仮設住宅で行われたものだったが、被災三県の各地でこうしたイベントが開かれる。 いくつかのイベントに参加した仲間たちから話を聞いたところ、どうもそれぞ…

さて、ここから。

関西に帰って来て、大学院生としての生活が始まった。 それにしてもなんと濃い仙台での2年半であったか。 知り合いのほとんどいない地で、私はかけがえのない経験をした。 ニート、ゲイ、フリーター、うつ病、発達障害、ありとあらゆるマイノリティたちがあ…

ドラマ『カルテット』で知る「ゆるく頑張る力」

ドラマ『カルテット』が終わってしまう。 こんなにも見ていて落ち着くドラマにはなかなか出会ったことがない。 それはまるで低反発枕のように私の心にしっくりとはまり、ほどよく笑い、ほどよくときめき、ほどよくハラハラできる。 『カルテット』は、松たか…

わたしとアダルトビデオにまつわる真面目なお話

久しぶりの更新だが、性にまつわる話をしたい。 今の日本は性についてオープンではない。 ヘテロ男性のほとんどが日常的にアダルトビデオを見ているにもかかわらず、 昨日の晩何を食べたかは話題にするのに、昨日の晩どんなアダルトビデオを見たかは話題に上…

限界集落から、まちづくりについて考えること。

石巻市雄勝町波板地区。 居住10世帯、高齢化率100%の紛れもない限界集落だ。 先日ボランティアで訪れた。 ナミイタ・ラボという住民たちが集まれる施設で、住民のおじいさんたちがのんびりとまちづくりを考えている。 個人的に「まちづくり」という分野は、…

ロード・オブ・ザ・リングに見るイケメンの定義

イケメンとは何か。 イケメンを解説するインターネットページをいくつか読んでみたところ、その意味は多種多様であるらしい。 今日はその意味付けを、J・R・R・トールキンが世に出した珠玉のファンタジー『指輪物語』を映画化した『ロード・オブ・ザ・リング…

アカデミックなコミュニケーションに慣れすぎるとデートで使い物にならない

さいきん同僚の大学教員とお昼に行くのが楽しい。 教育のこと、ジェンダーのこと、人間のこと、現代社会のことを食堂のまずいラーメンをすすりながら心ゆくまで話すのだ。 先日は「相模原障害者施設殺傷事件」から「動機は個人の認知の歪みか社会に通底する…

居場所づくりにはテーマがいる

ガス機器メーカーで働いていた友人から面白い話を聞いたことがある。 小さな町なので、どの家に誰が住んでいるかは地域住民ならだいたい知っている。 その家に住むおじさんはどうやら偏屈で、めったに外出せず、町の寄り合いにもなかなか出てこない、という…

男の居場所のつくりかた(3)「第1回男の勉強会」

前回の「男の居場所のつくりかた」からだいぶ時間がたってしまった。 シリーズの第3弾である。 kainishii.hatenablog.com kainishii.hatenablog.com 男の勉強会を開くことした私たちは、まず仙台市の男女共同参画センターに団体登録した。 専門の人たちに意…

合コンで研究データを集めるのはやめてください。

「語る」をテーマに居場所をつくる活動をしていて難しいのは、プライバシーの問題である。 https://www.facebook.com/RDFM0625/ 固定メンバーではないテーマ型のコミュニティを維持するうえで発信は欠かせない。 新しい人を呼びこんだり、資金を集めなければ…

ネオ・意識高い系を打ち崩すのはオタクである。

ネオ・意識高い系の台頭 「敷かれたレールに沿って生きているのはカッコ悪い」 ブログの内容には様々な種類があるが、このような「意識高い系」をさらにこじらせた文言をよく見かける。 Wikipediaによれば「意識高い系」とは、‟自分を過剰に演出(いわゆる「…

おにぎりせんべいの恐怖~パワハラの原理~

なんとも陽気なタイトルであるが、私が体験したことをもとに、パワーハラスメントとは何か、なぜ起こるか、などをまとめておきたいと思う。 パワハラのはじまり 新卒で関西の企業に入社した私は総務部に配属され、新社会人生活が始まった。 4大卒の男性社員…

しずかちゃんに見るジェンダースタディー

「男・女とはこういうもの」という固定的な性別の枠組み、ジェンダーステレオタイプ(性別固定観念)。 「プロポーズは男がするもの」といったように、私たちはそれを当たり前として暮らしているので、なかなかその存在に気づかない。 朝日新聞が先日「女子…

子どもの貧困における最も大きな問題とは

子どもの貧困。 今日本が抱える大きな問題の一つであり、近年流行している子ども食堂などの支援の輪が大きく広がっている福祉分野だ。 2年という短期間ではあるが、私も貧困世帯の中学生の居場所支援を行っていたことがある。 食事を満足にとることができな…

弱さを知るには-わたしの場合-

「弱さ」シリーズ。 最後は私がいかに自分の弱さ、自分の限界点に気づいたか、というお話。 以前貧困家庭の子どもの学習支援に携わっていた。 週に2回、まなび場に決まった子どもたちが集まりおしゃべりしたり、勉強したりしに来る。 ある男子中学生の学習計…

弱さを知るには-シン・ゴジラ編-

自分の弱さと向き合うきっかけとして、人との出会いについて書いてきた。 kainishii.hatenablog.com kainishii.hatenablog.com kainishii.hatenablog.com 出会った後気付く、自分と他者の違い。 そこで「自分の考えが全てに当てはまる訳ではない」と自分の限…